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オリンピック後の不動産市場はどうなるのか?

2020/06/20 不動産投資

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2013年にオリンピック開催地が東京に決まってから、首都圏不動産市場は上昇を続けてきました。その間、「オリンピックをピークに不動産価格は下落に転じるのではないか?」「オリンピック後も堅調に推移するのではないか?」など、東京オリンピックを不動産市場の1つの節目とする見方が多く出てきています。

 

世界的なスポーツの祭典であるために、これまで開催国に与えたインパクトは大きく、時には経済的な発展の足がかりとなってきました。

 

 

今回は、過去のオリンピック開催国が受けた経済的な影響を振り返りながら、東京オリンピック後の不動産投資市場について考察していきます。

オリンピックが与える経済的な影響

2020年夏に開催予定だった東京オリンピックですが、新型コロナウィルスの影響で一年の延期が発表されました。

通常は、オリンピック開催地の内定が決まってから開催年までは、7年の準備期間があります。開催国が享受する経済的な影響は、準備から開催時までの間接的な影響と、開催時に関わる直接的な影響とに分けることができます。

 

 

間接的な影響

・インフラ整備や都市の再開発の建設需要、またそれによって発生する雇用の促進

・開催決定による知名度の上昇で、訪日外国人増加。それに伴った消費需要の促進

 

 

直接的な影響

・期間中の国内外からの来訪者の滞在および飲食に関わる消費需要の促進

・競技施設や宿泊施設の新規建設需要の促進

 

また、オリンピックによって比較的影響を受けやすいとされている業種は、以下のようになります。

 

 

建設業

…オリンピック関連施設の建設やインフラ工事の増加。

ホテル観光業・飲食業

…国内外からの旅行客増加による滞在費および飲食費の増加。

報道マスコミ・広告宣伝業・警備業界

…大会運営面での需要増加。

消費サービス、小売り業

…オリンピック関連商品の販売による需要増加。

 

 

開催準備期間は、都市の再開発やインフラ整備の面から雇用が発生して経済が活発化。開催期間中は、広告宣伝による消費の活発化が想定されます。

 

特に、再開発によって都市生活の利便性が向上することで、開催後も長期的な経済発展を助ける側面があり、ここにオリンピックの大きな経済効果があると言えるでしょう。

過去開催国のGDP推移はおおむねプラス

では、実際に過去の開催国はどの程度経済効果を上げてきたのでしょうか?

以下のグラフは、1950〜2009年までの開催国の実質GDPへの影響を表しています。

 

出典:日本銀行調査統計局「2020年東京オリンピックの経済効果」

 

 

実質GDP成長率への影響(左)では、開催年の2〜5年前に大きく押し上げ、その後下がっていくことがわかります。これは、開催都市の再開発やインフラ整備などの固定資産投資が活発化するためです。

実質GDP水準への影響(右)では開催年後も減少に転じていないことから、再開発によって経済が持続的に押し上げられることを示しています。

 

 

ただし、発展途上国においては急速な発展がすでに伴っていることもあり、経済効果を単純に東京オリンピックに当てはめることはできません。

近年開催された都市で、最も経済規模が近い大会はロンドンオリンピックです。ロンドンが受けた経済効果を振り返り、東京オリンピック後の経済動向を考察していきます。

 

ロンドンオリンピック事後調査から見る不動産市場の動向

ロンドンオリンピックは2005年に開催が決定、2008年の金融危機を乗り越え2012年の開催を実現しました。

すでに成熟した都市であったロンドン大会のコンセプトは、「環境に配慮した都市型オリンピック」。競技施設や選手村の大部分をロンドン東部に集中して整備し、新設したのは34ヶ所中9ヶ所のみ。当初予定されていた開催費を最終的に下回る結果となりました。

 

 

ロンドンオリンピックの事後レポートによると、2004年から2020年までの17年間の合計で「生産額で約580〜830億ポンドが、また雇用者として約62〜89万人分が創出される」としています。この数値には、オリンピック開催後のレガシー効果も含まれています。

産業別に見ると「卸売・小売業」「広告業」「警備および観光関連産業」「建設業」の経済効果が高い結果となりました。

 

肝心の不動産業への影響ですが、事後評価レポートにはほとんど経済的な影響はなかったと結論づけられています。

ロンドン東部に新設したオリンピックパークには、周辺にショッピングセンターや約1万戸の住宅、2つの小学校と1つの中学校、9つの保育園、その他コミュニティ施設などが整備されましたが、この地域の商業用不動産の価格や賃料における明確な影響はなかったようです。

 

 

金融危機が不動産全体の市場サイクルに大きな影響を与えたことも影響していることが考えられますが、金融危機を差し引いても他の産業と比べて市場への影響があったとは言えない結果となりました。

住宅価格に関してもオリンピックが開催されたロンドン市内の特別区が他のエリアと比べて格段に上昇することはなく、目立った経済波及効果はなかったとされています。

 

 

ロンドンの住宅価格指数の推移を見ると、2005年開催決定時から緩やかに上昇しますが2008年の金融危機で下落、その後緩やかに回復し2012年開催時には金融危機以前の水準まで持ち直しました。開催後は下落することなく、上昇を続けています。

 

東京オリンピックが不動産市場に与えてきた影響と今後の影響は?

東京オリンピック開催決定当初から注目されてきたのが、大会のメインエリアとなる東京湾周辺です。競技施設の新設や鉄道・道路などの輸送インフラが整備される計画が発表されてから、首都圏全体の不動産価格、特にマンション価格を押し上げ続けています。

2013年当時、世界の主要経済都市と比較して東京の物件価格が割安であったことから外国人投資家の注目を受け、人気が上昇したことも要因としてあげられます。

 

ただし、東京湾以外の大部分の住宅エリアは、オリンピック開催の影響というよりも金融緩和によって借入金利が低下したことが、価格上昇の要因としては大きいでしょう。

 

 

住宅の価格や賃料が決まる上で影響するのは、あくまで住宅の利便性や快適性であり、オリンピックの開催自体が首都圏全体の不動産価格に影響を与えているということは考えにくいと言えます。その点、再開発によって利便性が向上したエリアは、開催後も人気を維持し続けると見られます。

 

また、不動産投資は株式投資よりも流動性が低く、短期的な売買で利益を出すことに向いている投資ではありません。そのため、オリンピックを1つの節目として売買をするよりも、長期的な目線で物件選び、安定経営をすることが大事となってきます。

オリンピック終了で国民感情が落ち着き、経済が冷え込むのではないかとの見方もありますが、再開発や観光誘致によって海外観光客からの人気は上昇し、訪日外国人の数は従来の予測を超える拡大をしてきました。これは、過去の開催国もおおむね同じ傾向があり、その後も経済全体に持続的なプラス効果をもたらすとされています。

 

 

そのような傾向の中で、不動産価格だけがオリンピック後に大幅に下落するとは考えにくく、あるとしても限定的な下落にとどまるのではと見られます。

事実、1996年以降に夏季大会を開催したアトランタ、シドニー、アテネ、ロンドンの住宅価格は、開催後に下落することなく緩やかに上昇しています。

まとめ

ここまで、過去の夏季オリンピック開催都市の経済と不動産市場の傾向を解説してきました。各国とも個別の要因があるため、正確に市場を予測することは困難です。だからこそ、オリンピック以外の経済の動向をチェックすることが、不動産投資には重要となってきます。

 

 

ただし、基本的な優良物件の見極め方や、自身の属性にあった投資方法などを身につけた上でなければ、不動産投資の好機をつかむことはできません。不動産投資セミナーや個別相談では詳しい市場動向を聞くこともできるので、ぜひ気軽に参加してみることをおすすめします。

 

【筆者:ワイズアカデミー(株)】

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