マイホームはリスクだらけ
まず、住宅を購入するべきか、賃貸物件に住むべきか、という住宅を巡る「永遠のテーマ」から。
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2022/05/15 ライフプラン
永遠のテーマを「リスク」を切り口に判断する
まず、住宅を購入するべきか、賃貸物件に住むべきか、という住宅を巡る「永遠のテーマ」から。
決定にはいろいろな要素があり、結論を出すのは困難です。ただ、経済原理的には、どちらでも損も得もありません。
不動産会社の視点から住宅物件を販売するか、賃貸するかを考えてみましょう。販売するほうが大きな利益を得られるなら、販売する業者が増え、物件価格は低下します。賃貸するほうが大きな利益を得られるなら賃貸する業者が増え、賃貸料は低下します。裁定(アービトラージ)が働くので、長期にわたってどちらかが損することも得することもありません。
では、住宅を買う・借りる側にとっても、どちらでも関係ないのでしょうか。そうではありません。リスクを重視するなら、断然、賃貸物件がお勧めです。
日本で会社員をしている限り、転勤がついて回ります。日本では、従業員を解雇しない代わりに、会社命令でどこにでも転勤していただきます、という雇用慣行になっているからです。「住宅を購入したので、転勤は勘弁してください。でもクビにしないでください」というのは、ちょっと虫が良すぎます。
また、転職の時代になり、キャリアの発展に合わせて仕事・会社を変えるのが当たり前になっています。転職すれば、勤務地が変わることがあります。住宅を購入して決まった場所に住み続けなければいけないというのは、キャリアの選択肢を狭めてしまいます。
さらに、老後生活は、自分一人か夫婦二人。「家族用に」と広いマイホームを構えると、長い老後生活で持て余し、掃除すらままなりません。老後まで待たずとも、離婚して一人暮らしになることも考えられます。
以上から、マイホームを購入せず賃貸物件を借りて、キャリアやライフステージに合わせて住宅を変えるというのが、リスクという観点からは合理的な選択なのです。
とはいえ、「マイホームが夢」「一国一城の主になりたい」といった願望から、リスクを承知で住宅を購入することもあるでしょう。その場合、一戸建てを買うべきでしょうか、マンションを買うべきでしょうか。
ここで、マンションに固有のリスクを考える必要があります。マンションには、「大規模修繕を他の住民と合意できるか」という難問があり、お勧めできません。
一戸建てでもマンションでも、建築後20年とか経ったら、大規模修繕が必要になります。一戸建ての場合、修繕する(しない)ことを家主である自分で判断できます。それに対しマンションの場合、数十人の住民、タワーマンションの場合、数百人の住民と合意しなければなりません。
日本で最初のタワーマンションは1998年にできたエルザタワー55(埼玉県)で、2015年に大規模修繕を行いました。初期の頃は、富裕層がタワーマンションを購入したので、修繕積立金が不足するというケースは稀でした。
しかし、タワーマンションがブームになり、普通の会社員が背伸びして買うようになったため、毎月の積立金を払えず、積立金が不足するケースが出始めています。今後、積立金不足から大規模修繕に合意できないというケースが続出するでしょう。
たとえ自分が高収入でも、金銭的に余裕がない他の住民の反対意見で大規模修繕を合意できず、マンションが廃墟化していくというリスクがあるわけです(実際に積立金不足の場合、積み立てた金額の範囲でできる小規模修繕を繰り返し、問題を先送りするでしょう)。他人に自分の人生を委ねたくないなら、マンション購入は危険な選択です。
最後に、住宅ローンはどういう借り方をしたらいいのでしょうか。多くの金融機関は「変動金利・元利均等返済」を勧めるようですが、私は「固定金利・元金均等返済」を強く勧めます。
まず、返済方法には、毎月の返済額が将来にわたって一定の元利均等返済、返済額が減っていく元金均等返済、返済額が増えていくステップアップ返済などがあります。
元金均等返済は、元金が大きい初期段階には金利負担が大きく、元利均等返済に比べて返済額が大きくなります。収入が少ない若い世代には、足元の返済額が少ない元利均等返済やステップアップ返済のほうが「借りやすい」と支持されています。
しかし、元利均等返済やステップアップ返済には、元金均等返済よりも総返済額が大きくなってしまうというデメリットがあります。初期段階では返済額のうち金利を返済する部分が大きく、頑張って繰り上げ返済をしても、元金がなかなか減っていきません。
ここで考えたいのが、やはりリスクです。住宅ローンは35年とか長期にわたってかなりの金額を返済し続けなければなりません。20、30代の会社員がローンを組むとき、「60歳くらいまで健康に働ける」「50歳くらいまで給料が増え続ける、少なくとも激減はしない」「まとまった退職金がもらえる」といった前提があります。
しかし、健康を害することなど、いくらでもあります。給料が減ったり、会社が傾いてリストラされるのも、最近では日常茶飯事です。住宅ローンを組むとき、これらの前提が崩れてしまうことを想定する必要があります。
返済が困難になるリスクを考えるなら、ステップアップ返済は論外ですし、元利均等返済もお勧めできません。利息収入を増やしたい金融機関の策略に乗らず、元金均等返済を選択するのが賢明です。
金利には、市場金利に合わせて変動する変動金利と借入時点の金利が続く固定金利があります。たとえば、相談者からよく話題に上るauじぶん銀行の場合、4月25日時点で変動金利が0.41%、固定金利35年が2.44%(全期間引き下げプラン)です。多くの住宅購入者は、金利負担が小さい変動金利に心を動かされるわけですが、これはいかがなものでしょうか。
「将来のことは誰にもわからない」というものの、金利はマイナスにはならないので、今後大きく下がることはありません。一方、1990年頃には変動金利が8%超に達したことを思い起こすと、今後、数%上がってもまったく不思議ではありません。
将来の金利上昇リスクを考えると、固定金利にすべきです。そして、借りるなら金利が最安値圏にある「今でしょ」(古い)という判断になります。
以上をまとめると、「住宅は購入せず賃貸にするべき。どうしても購入するならマンションでなく一戸建てを。ローンを組むなら変動金利・元利均等返済でなく固定金利・元金均等返済で」という結論になります。
もちろん、これは「リスクを最重要視するなら」という前提での話です。人には個別の事情や趣味・嗜好、主義・信条があり、この結論が絶対とは言いません。「タワマンに住むのが俺の夢だ。破産するのを覚悟で買うぞ!」という選択も、大いに結構です。ただ、不透明感が増すこれからの時代に、リスクが最も重要な判断基準であることを最後に強調しておきたいと思います。
【参考元:「持ち家or賃貸」論争、今この状況における考え方 | 不動産 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)】
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