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豊島区が「ワンルームマンション税」の見直し検討か? 1戸50万円、課税導入の背景/楽待

2023/11/21 不動産投資

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日本創成会議が豊島区を消滅可能性都市とした理由は、なによりも「人口の再生産力」が低い点にある

2004年前後の豊島区は、約12万5000の住戸のうち40%以上が30平方メートル未満の住戸、いわゆるワンルームマンション

2014年、日本創成会議が「消滅可能性都市」を発表した。日本創成会議は元総務大臣の増田寛也氏が座長を務めるシンクタンクで、それだけに政官財界への影響力は大きい。

 

そんな日本創成会議が消滅可能性都市などという刺激的な名称で自治体をリストアップしたのだから、名指しされた自治体は蜂の巣をつつくような大騒ぎとなる。

 

消滅可能性があると名指しされた市区町村の多くは、過疎化・少子高齢化といった問題を抱える地方都市だった。

 

しかし、意外にも東京23区にも消滅可能性都市としてリストアップされた自治体があった。それが豊島区だ。豊島区は23区で唯一の消滅可能性都市とされ、注目を集めた。

 

豊島区は若者の街としてにぎわう池袋を擁し、立教大学・学習院大学をはじめ大学も多く立地している。活気があふれ、とても消滅するような気配はない。

 

その一方、豊島区は2004年4月から狭小住戸集合住宅税(通称:ワンルームマンション税)を導入。

 

ワンルームマンションは、主に若年層が居住する。その建設を抑制するような税金を導入すれば、ワンルームマンションの供給は鈍ることは明らかで、若者は豊島区に住まなくなる。

 

それが、消滅可能性自治体にリストアップされた原因になったのか?

 

実は、豊島区が制定したワンルームマンション税は、その逆を意図している。では、なぜ豊島区がワンルームマンション税を制定したのか? その背景を探った。

 

 

「無条件の人口増加」は歓迎されず

 

 

日本全体が人口減へと突き進む中、地方自治体は何とかして人口を増加させようと躍起になっている。

 

一般的に人口増は地方自治体、特に基礎自治体と呼ばれる市区町村にとって歓迎すべき話として受け止められている。そうした風潮も後押しして、行政は人口増に結びつく政策に取り組んでいる。

 

しかし、それはあくまでも一般論に過ぎない。人口増でも、ときに深刻な問題が起きることもある。その顕著な例が東京都江東区だ。

 

2000年代後半、江東区では湾岸部にタワーマンションが林立。その影響で、人口が爆発的に増加した。

 

特に未就学児童や小学生の子育て世帯が目立って増えたが、それら子育て世帯は一部の地域に偏在。そのために、想定外の現象が起きた。

 

本来なら納税者という意味でも、地域に消費をもたらすという効果でも、さらに地域活性化という面でも、子育て世帯が増えることは大歓迎される。

 

その一方で、子育て世帯が爆発的に急増すると自治体は保育所や小中学校、さらには公園・緑地などの整備に追われる。

 

江東区は保育所・小中学校の整備が追いつかず、一時的にファミリー世帯をターゲットにした大規模マンションの建設を抑制する施策を打ち出したことがある。

 

現在、これらの施策は解除されているが、人口増加が無条件に歓迎されるわけではなく、年齢階層が極端にいびつになる事態は新たな弊害を生むという認識を行政は強くした。

 

 

豊島区が「消滅可能性都市」になった理由

 

 

消滅可能性都市と名指しされた豊島区も複雑な事情を抱えていた。日本創成会議が豊島区を消滅可能性都市とした理由は、なによりも「人口の再生産力」が低い点にある。

 

日本創成会議が指摘する「人口の再生産力」とは、平たく言えば出産適齢期とされる20〜39歳までの女性人口を指す。

 

人間が生まれて死ぬまでの間に子供を生むことで、人口の「再生産」がなされる、という考え方だ。若年層が集まる都市でも、20〜39歳までの女性人口が少なければ消滅可能性が一気に増す。

 

2000年前後から顕著になった都心回帰の影響を受け、豊島区は2015年に人口が28万人を突破。これは35年ぶりの高い人口水準だったが、その内訳を見ると決して手放しで喜べるものではなかった。

 

なぜなら、35年前の人口ピラミッドと比較すると65歳以上が倍以上を占める一方で、0~14歳の年少人口が半減していたからだ。

 

 

豊島区の人口ピラミッドの比較(「豊島区人口ビジョン」より引用)

 

 

大学が多く立地している豊島区だったが、この数字からは就職・結婚・出産というライフステージが進むにつれて、近隣自治体へと転出していることが窺える。

 

 

ファミリー呼び込む施策が「ワンルームマンション税」

 

 

つまり、豊島区が取り組まなければならない消滅回避策は子育て世代を呼び込むことということになる。

 

ただ、それまで豊島区が子育て世帯の呼び込みを怠っていたか?といえば、決してそんなことはない。

 

しかし、行政の力だけでは子育て世帯が呼び込むには限界がある。例えば、2004年前後の豊島区には約12万5000の住戸があった。

 

そのうち40%以上が30平方メートル未満の住戸、いわゆるワンルームマンションとなっていた。

 

 

2004年当時、豊島区には単身者向け狭小物件が多かった(「豊島区狭小住戸集合住宅税のお知らせ」より引用)

 

 

ワンルームマンションは一般的に単身者が居住するので、ワンルームマンションが多くなれば多くなるほど比例して単身者の割合が増加する。当時の豊島区内の単身世帯は、約56%を占めている。

 

単身者が増加しても、それに比例してファミリー世帯が住めるようなマンションが供給されるなら問題なかった。しかし、実際にはファミリー世帯向けのマンション供給が停滞。

 

そうした危機感もあり、豊島区は住宅ストックのバランスを是正し、ファミリーが長く住み続けられるような住環境の確保に乗り出した。

 

 

1戸につき課税「50万円」

 

 

こうした経緯から、豊島区は2004年、独自の条例で狭小住戸集合住宅税(通称:ワンルームマンション税)を制定した。

 

どうして、一自治体でしかない豊島区が新税を創設できるのか?

 

それは2000年から段階的に施行されている地方分権一括法によって法定外税の制定が容易になったからだ。

 

制定当初のワンルームマンション税は、29平方メートル未満の住宅を「狭小住宅」と定義。その多くがワンルームマンションだった。9戸以上のワンルームがある集合住宅を課税対象とした。

 

ワンルームマンション税は、1戸につき50万円が建築主に課税される。1戸につき50万円という税額は、固定資産税をもとに算出された。

 

つまり、建築主は最低でも450万円を、建築等を行うときに一括納付しなければならない。ここでいう「建築等」とは、建物の新築、増築、大規模修繕、大規模模様替、用途変更などを指している。

 

ワンルームマンション税を制定したことにより、豊島区の建物でワンルームマンションが占める割合は減少していった。

 

 

ワンルームマンション税施行前後の狭小住戸の推移(第1回 豊島区税制度調査検討会議資料 1-4より引用)

 

 

しかし、豊島区のワンルームマンション税はこれだけで終わらなかった。豊島区は5年に一度の頻度でワンルームマンション税の内容を見直すことにしており、その作業が2009年に早くも進められたのだ。

 

ワンルームマンション税が制定された2004年の時点では、ワンルームマンションの定義を「1部屋あたり29平方メートル未満」としていたが、これを「1戸あたり30平方メートル未満」へと変更。翌2010年から施行した。

 

「ワンルームマンションの定義を一戸あたり29平方メートル未満から30平方メートル未満へと変更した理由は、国土交通省の住生活基本計画で2人世帯の最低居住面積水準が30平方メートルに変更されたことが理由です」と説明するのは豊島区区民部税務課の担当者だ。

 

 

来年度に制度見直し迫るか

 

 

豊島区はワンルームマンション税で、どのぐらいの税収を得ているのか?

 

確定している直近3年間の数字を見ると、2021年度が約4億8600万円、2020年度が約5億6600万円、2019年度が4億7200万円となっている。この数字を大きいと見るか意外に少ないと見るかは、その人の判断によるだろう。

 

いずれにしても、ワンルームマンション税が制定された2004年度からの累計は70億円を超える。

 

先ほど説明した法定外税には、税収の使途を限定しない法定外普通税と使途を限定する法定外目的税の2つがある。

 

ワンルームマンション税は法定外普通税のため、その使途は限定されていないが、「その大半は区の住宅基金に積み立てられ、区営住宅の改修費や子育てファミリー世帯への家賃助成事業、高齢者世帯の住み替え家賃助成事業などに活用している」(同)という。

 

その後、豊島区のワンルームマンション税は何度か内容を変更するタイミングを迎えたが、特に目立った内容変更はされていない。

 

しかし、来年度に5年に一度の見直しのタイミングとなる。現在、来年度に向けて豊島区は有識者とともに変更点について議論を重ねる。

 

担当者は「まだ、庁内で検討中なので確定したわけではありませんが…」と前置きしながらも、「2013年から2018年までの間に、豊島区内では50平方メートル以上の、いわゆるファミリー向けの住宅が減少しています。そうした点をふまえ、ファミリー世帯の定住促進を図るべく、要綱に『ファミリー附置』を盛り込む予定で議論が進んでいます」という。

 

ファミリー附置(ふち)とは、ワンルームマンションの中に、一定面積以上のファミリータイプの住戸を併設することだ。

 

要綱に盛り込まれると、例えば「商業地域以外に建てられる30戸以上の共同住宅に対して、2戸以上は必ず50平方メートルにしなさい」というような制限が加えられることになる。

 

「どれほどの影響があるのか現段階では不明ですので、まず様子を見るためにファミリー附置は条例にするのではなく、あくまでも要綱という緩やかな制限にとどめる予定です」(同)

 

 

ワンルーム「のみ」のマンション、規制厳しく

 

 

豊島区はワンルームマンション税によって耳目を集めた。さらに、人口の再生産力を高める住宅政策として打ち出したのが、このファミリー附置だった。

 

豊島区のファミリー附置は要綱にとどめられているが、それでも実質的にワンルームマンションの建設は制限されている。

 

東京23区にはファミリー附置を加えることで、豊島区よりもワンルームマンションに対して厳しいスタンスを取っている区もある。

 

中央区・港区・新宿区・文京区・目黒区・江東区・台東区・墨田区・世田谷区などでは、ファミリー附置を条例化。条例化することで、ワンルームマンションの乱立に一定の歯止めをかけている。

 

ファミリー附置を条例化した区は意外に多いが、その対象となる物件の規模や条件などは異なる。また、ファミリー附置を義務付けている住宅戸数や面積も区によって異なっている。

 

ファミリー附置を要綱にとどめているのは、東京23区では豊島区のほかには品川区と杉並区だけとなっている。こうした状況からも、東京23区の自治体がワンルーム「だけ」の集合住宅に厳しい目を向けていることが窺える。

 

その豊島区は、6期24年にわたって区政を担ってきた高野之夫区長が今年2月に死去。今春、高野区政を副区長として支えた高際みゆき候補が新区長に就任した。

 

新区長に女性が就任したことで、区職員や区議会議員、区民からは今後は子育て支援策が充実するとの期待が高まっている。

 

豊島区が盛り込む予定のファミリー附置は、直接的に子育て支援や少子化対策に寄与する政策ではないが、子育て世帯の住居を増やす取り組みの一環ではある。

 

この政策が間接的に子育て世帯を増やす作用をもたらすことになるだろう。

 

奇しくも岸田文雄首相は2023年の新年会見で、異次元の少子化対策を表明した。また、こども家庭庁が新年度から発足。

 

今後は政治面から子育て支援・少子化対策が推進されることは間違いなく、行政の住宅政策にも及ぶだろう。それは、当然ながら不動産市場にも影響を与えることになる。

 

 

 

 

参考元【豊島区が「ワンルームマンション税」の見直し検討か? 1戸50万円、課税導入の背景 |楽待不動産投資新聞 (rakumachi.jp)

 

 

 

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